最近第4次産業革命としてIotという言葉が目に着きます。様々の物がインタ―ネットに繋がるという時代に来たということですが、昔からインターネット経由で遠隔操作する物はたくさんありました。こういった製品を発明として特許出願する場合の注意点について、特許庁から審査基準の補完について昨年3月に発表されています。
36ページから、より具体的な例が示されておりますが、
38ページには、請求項1が
「配車サーバと、配車希望者が有する携帯端末と、無人走行車とから構成されるシステムであって、 配車サーバが配車希望者から配車位置を指定した無人走行車の配車依頼を受け付けると、前記配車希望者に 対して無人走行車を配車することを特徴とする、無人走行車の配車システム。」
となっている発明については、発明に該当しないとあります。
その理由として、
「情報処理は特定されておらず、無人走行車の配車という使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工を実現するための具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえない。。そのため、請求項1に係る発明は、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって使用目的に応じた特有の情報処理システム又はその動作方法を構築するものではない。」
とあります。
要は具体的処理方法の記載がクレーム(請求項)に記載されていない発明は、人為的な方法をつかったビジネスモデルと同じだから特許にしないと言っているように思えます。従って、Iot関連の発明においては、「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工」が請求項にある程度記載されていないといけないということになります。どの程度「特有の情報の演算又は加工」を特許請求の範囲に記載するかは、先行技術との関係などを吟味して検討することになります。
もう1点、Iot関連の発明は、侵害発見という観点から少し注意が必要となります。インターネットに接続する機器の場合、サーバなどを含めた全てのシステムを自社で実施するとは限らないからです。つまりシステム全体の中で、端末側の処理、サーバ側の処理、機器側の処理などそれぞれが存在し、全てを同じ会社が行うとは限らないということです。裏を返すと、システム全体の処理として請求項を記載しても、それら全体を実施する者はいないかもしれません。そうすると、折角権利を取得しても自社の開発成果を十分に保護できるとは限りません。
このような場合、システム全体が特徴を持つ中で、端末、サーバ、機器のそれぞれについても何か特有の処理をしていないか検討することが重要です。そして、その中で、侵害発見し易い発明を抽出しておくことが重要です。
また、米国にはAlice判決という厄介な判決もありさらに注意が必要です。
私の性分で、人に言うだけでは気がすみませんので実際に自分も工作キットを買ってきてIot機器を作ってみました。オープンソースを活用すれば、比較的簡単にできるものもあります。エンジンの設計や自動車の構造・制御については会社員時代に散々やってきましたが、こういった少し違った分野の研究を明細書に活かすことも弁理士の仕事だと思います。
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