自動車業界では、自動運転について注目されていますが、先日も米国のフォードモータースから自動運転パトカーに関連する出願があったというニュースが出ていました。
技術的な面については、別のブログに記載することとして、ここで注目したいのは、特許請求の範囲の記載内容です。
今回のフォードの出願である、US2018-18869のclaim1を見ると
「1. A method, comprising: obtaining, by a processor associated with an autonomous vehicle, an indication of violation of one or more traffic laws by a first vehicle; maneuvering, by the processor, the autonomous vehicle to pursue the first vehicle responsive to obtaining the indication; and remotely executing, by the processor, one or more actions with respect to the first vehicle. 」とあります。
日本語に直すと、
「自律車両に構成されたプロセッサによって、第1の車両による1つ以上の交通法違反の表示を取得するステップと、
前記指示を得ることに応答して前記第1の車両を追いかける自律車両を前記プロセッサによって操縦するステップと、
プロセッサによって、第1の車両に関する1つ以上の動作を遠隔的に実行するステップとを含む。」
となり、自律車両のプロセッサの処理方法が権利範囲となっています。
つまり、上記処理は全てプロセッサが行うということになっています。一瞬、自律車両の中のプロセッサがやるのか?と思ってしまいます。
日本の自動車の出願では、プロセッサ(演算処理装置)の処理方法を記載することは珍しいと思います。今回の発明の場合ですと、
「第1の車両による1つ以上の交通法違反の表示を取得するステップと、
前記指示を得ることに応答して前記第1の車両を追いかける自律車両を操縦するステップと、
前記第1の車両に関する1つ以上の動作を遠隔的に実行するステップと、
を含む制御方法。」とする場合が多いと思います。
このとき、プロセッサは出てきません。
しかし、この状態で出願すると、米国の出願では、制御に関して、「どこが」、「何をする」と言う点を明確にするように補正させられることがあります。米国は、主語に対してうるさい国というイメージです。米国出願の基礎となる日本の明細書上でも、制御装置はECUで、ECUのCPU(プロセッサ)がこの処理をするなど、「どこが」、「何をする」を明確に記載しておかなければ、補正できないこともあり得ます。
この点は、Iotのクレームには大変重要になってきます。つまりサーバのプロセッサで処理するのか、あるいは端末側のプロセッサで処理するのか、あるいは機器側のプロセッサで処理するのかです。もし限定する必要がないのなら、どこにあってもよいなどの記載も必要です。今回のケースでは、「自律の警察用車両コントローラー300」のプロセッサが処理を行うようですが、0022段落に「Autonomous police vehicle controller 300 may be installed in, equipped on, connected to or otherwise implemented in autonomous police vehicle 110 in scenario 100 and autonomous police vehicle 210 in scenario 200 to effect various embodiments in accordance with the present disclosure.」とあり、
システム100の自律警察車両110に内蔵されても、装備されても、コネクトされても何でもよいと記載されおり、プロセッサはコトンローラの中にあるが、コントローラはどこにあるかは特に限定されない形になっております。
こういった細かい手当が米国出願では必要ですし、あまり日本では気にならない「何処が」「何をする」という、いわば主語と述語の関係を気にするのが米国出願を意識した際には必要です。Iot関連の出願は、構成が複雑になるため、この点を意識したいと思います。